今回は、「約20年当事者と家族を支援、臨床心理士が考える『不登校の子の進路選択』」という記事をご紹介します。
前回の記事で、不登校の子には本人の望んでいないことはしない・させない・言わないという「何もしない」をやってみましょうと提案しましたが、実際にやってみたという方はいらっしゃるでしょうか。
宮崎県にも縁がある農学博士が仰っていましたが、100人に講義して全員が素晴らしい技術だと絶賛してくれたとしても実践してくれるのは10人いるかいないか。1年後も継続して実践してくれているのは良くて1人か2人くらいなのだそうです。
“実践する”が意外と難しいことなのだと分かるお話ですが、効果があるかどうかも分からない「何もしない」をやってみようと思える人の方が少ないでしょうし、実際に「何もしない」をやってみたという方は継続が難しいことも良く理解出来たかと思います。
そして、「何もしない」を実践してみた方は、周囲の人が「何もしない」ことこそが本人の安定に繋がると気付けたのではないでしょうか。
上記記事にあるように、周囲の人が「何もしない」ことが本人の”心のエネルギー”を充電するためには必要であり、本人ですら本人の望んでいないことは「何もしない」ようにすることが大事なのです。
本人なのに本人の望んでいないことをするはずがないだろうと思った方は、新型コロナやインフルエンザなどで体調が悪くて仕事を休んだ時のことを思い出してみてください。
仕事を休めた安堵感はあったでしょうが、それ以上に仕事を休んでしまった罪悪感と後ろめたさでいっぱいだったのではありませんか?
休んだことで滞ってしまう仕事が気がかりで早く復帰しなければと思いませんでしたか?
不登校の子も同じです。
罪悪感と後ろめたさでいっぱいで、早くどうにかしなければという焦りと不安もあります。
無意識に自分で自分の“心のエネルギー”を削ってしまっているので、学校を休んでもなかなか回復出来ず、焦りと不安がますます大きくなってしまって不登校が長期化してしまうというわけです。
学校へ行けなくなったり授業に付いていけなくなると、進路について不安を感じる保護者が多いと思いますが、それ以上に不安を感じているのは本人自身です。
少しでも良い学校へ進学するために無理してでも学力を上げることに注力しがちですが、それが原因で体調を崩してしまっては意味がありませんし、無理して入ったとしても、入った先で授業に付いていけなければ中退ということにもなりかねません。
出来る範囲内で出来ることをやり、結果としての学力に見合った学校へ進学するのが本人にとっても一番良いのではないでしょうか。
もちろん、学校の雰囲気や先生たちの印象、実際に通っている生徒たちの様子などを見て本人が気に入るかどうかも大事です。
学校見学や通学路の確認なども入念に行い、どの学校となら相性が良さそうか本人と相談しながら選んでくださいね。
その際、保護者の願望はちょっと横に置いておきましょう。
選択肢を提示するのは良いですが、どうするか決めるのは本人です。保護者が決めて良いことではありません。
血の繋がった親子であっても親と子は違う人間で、違う人生を歩くのですから、自分の人生は自分で決めさせましょう。
そうやって自分で決めた人生であれば、本人も後悔無く歩いていけるのではないかと思います。
発達にでこぼこのある子の不登校や進路など、一人で悩まず私たちと共有してください。一緒に考えたり、選択肢の一つくらいは提案出来るかもしれません。