感覚を擦り合わせよう

今回は、「『いつも大切な仕事が後回しに』『異動の内示でパニック寸前』大人の発達障害“リアルな日常”」という記事をご紹介します。

発達にでこぼこのある子と会話をしていると、たまに話が噛み合わなくなることがあります。

不思議に思って確認してみると、どうやら本人の五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)で受け取っているモノが、一般的なモノと違っていたり、少しズレていたりするようなのです。

例えば、文字を書く時。

一般的に、文字を書きながらペン先を見ている人はあまりいません。

意識したことすらない人が多いと思いますが、文字を書いている時は書いている文字の方を見ているはずです。

書き上がっていく文字を見ながら、次はどう書くのかを考えているはず。

ですが、発達にでこぼこのある子は、ペン先を見ていて文字があまり見えていないらしいのです。

ペン先という”動くもの”が気になってしまうからなのだろうと思いますが、発達にでこぼこのある子と同じようにペン先に視線を当てたまま文字を書こうとすると、恐ろしく書き辛いことが分かるかと思います。

さらに言うと、ペン先の動きに合わせて視線を動かすので酔います。

こんな状態で文字を書くのですから、上手く書けなくて当然ですよね。書いているとすぐに疲れてしまうというのも頷けます。

では、ペン先ではなく文字の方を見るように指導すれば解決することなのかというと、そう単純なことでもありません。

発達にでこぼこのある子には、”動くもの”が気になるという特性があるからです。

ペン先ではなく文字の方を見ることで字が整うようになると教えるのは良いですが、本人が望んでいないのに何度も繰り返し書かせたり、綺麗に書けるようになるまで練習させるのはあまり好ましくありません。

ペン先に視線を当てたまま書いてみると分かると思いますが、自分にとっていつも通りではない条件下では、いつも通りの文字を書くことすら難しいのです。

ペン先ではなく文字を見ながら書くということに慣れるまでには結構な時間がかかること。慣れるまでは前と同じように書けなくても当たり前だということを本人にも伝えながら、ゆっくり時間をかけて楽しみながら文字の練習をしていってください。

最終的な目標は、他人が読めるくらいの字が書けること。

綺麗である必要はありません。

ひらがなが多くても構いません。

書いた内容が相手に伝われば良いのです。

もちろん、書くよりもパソコンやスマホなどで打つ方が楽だというなら、そちらを使った方が効率的でしょう。

このように、発達にでこぼこのある子が五感でどういう受け止め方をしているのかを知ることで、本人に合った対処方法は何なのかを考えることが出来るようになります。

上記記事内にもありますが、発達にでこぼこのある子は、本人の努力だけでは難しい部分がどうしても出て来てしまいます。

ですので、とりあえずの目標は最低限に設定して、上を目指せそうなら上を目指し、下回りそうならツールを使ったり人の手を借りたりしましょう。

そうすることで、本人も周囲もあまりストレスを感じることなく過ごせるようになるのではないかと思います。

本人の特性が良く分からない時は私たちにご相談ください。似たような特性を持った子がいたら、対処方法の一つくらいはお伝えできるかもしれません。