教科書を作るために

今回は、『東大卒夫婦が抱えた「子育ての悩み」とは? 「頭良すぎるとそう思うんだ」の声…Xで盛り上がる教育の難しさ』という記事をご紹介します。

東大卒というともの凄く頭が良い人たちですが、上記記事を読むと分かるように、もの凄く頭が良い人たちでさえ自分の子を理解出来るようになるまで10年掛かっています。

この世の中に我が子を育てるための教科書なんてモノはありません。子ども一人一人個性があり、それぞれ人格が違うからです。東大卒の人たちも我が子を育てるための教科書なんてものはない状態で、一から我が子のことを知っていったのです。

ああでもない、こうでもないと頭を悩ませること10年。長い年月ですよね。人生が100年だとしたら、約10分の1です。そんな長い年月を掛けてやっと我が子のことを理解出来たところで初めて、その子に合った教育が始まるのです。

ですが、東大卒の人たちでさえ10年です。”普通”の人なら、子どもが自立しても分からないままかもしれません。

保護者にとって子育て期間は人生の約4分の1程度ですが、子ども本人にとっては自立するまでの人生全ての期間で、自分をあまり理解してくれていない大人たちからあれこれとお世話されることになります。

保護者だけでなく本人の周囲にいる全ての人が本人に対して無理解な状態であれば、結構なストレスですよね。自分ではどうすれば良いのかすら分からない状態で、周囲からは早く出来るようになれ、何で出来ないんだと言われるのです。

そんな状態の本人が感じている苦痛は、私たち保護者にとっての子育てと一緒です。

私たち保護者も自分が親からされたことと同じように育ててみるものの、トラブルが次から次へと続出するのです。自分が親から受けた教育が我が子には合わないとなると、一気に何も分からなくなりますよね。苦痛しか感じなくなります。

我が子可愛さだけで子育てをしているような状態になってしまうと、あっという間に親子ともに限界が訪れます。そうなれば家族崩壊なんてことにもなりかねません。

今現在、親子そろって苦痛しか感じていないのであれば、出来るだけ早く保護者向けのペアレント・トレーニングを学ぶことをオススメします。

ペアレント・トレーニングとは、発達にでこぼこがある子を持つ保護者向けに国や医療機関が推奨している子育て方法です。もちろん、発達にでこぼこがなくても有効ですし、我が子を育てるための教科書を保護者自身で作り出す方法だと思ってください。

そして、保護者がペアレント・トレーニングを学び、本人に効果的な子育て方法が理解出来るようになるまでは、本人に”何もしない”でください。赤ちゃんの頃と同じように、本人が出来ていないこと全てのお世話をしてあげてください。

もちろん、本人の心身の健康に関わること、犯罪に繋がるようなこと、他人に迷惑を掛けるようなことであれば全力で止めてください。叱ってあげてください。

ですが、それ以外のことはペアレント・トレーニングを学んで実践してみようと思えるようになるまで”何もしない”を徹底します。

相当難しいです。保護者は自分の感情をコントロールしなければなりません。

動画を見ながらゴロゴロしていても何も言ってはいけませんし、学校の宿題をやらずにゲームしていても怒ってはいけません。コップを割っても怒ってはいけませんし、脱ぎ散らかした服がリビングに置きっぱなしでも、保護者が「代わりに片付けておくね」と言ってから本人の代わりに片付けてあげるのです。本人が嫌がることも禁止です。

小学生、中学生、高校生ともなると相当大変ですよね。本人は楽かもしれませんが、保護者は自分の感情をコントロールするのと本人のお世話でもの凄く大変です。学業がない園児くらいの頃ならまだ楽かもしれません。

保護者が自分の感情を必死にコントロールしながら本人のお世話をしている間、当の本人はのんびりと過ごすわけですから、ただただ見ているだけしか出来ない保護者側は相当ムカつくと思います。お世話もあって大変ですから疲れもするでしょう。

ですが、どう考えても本人は穏やかになりますよね。保護者からあれこれ言われず、自分がやりたいことだけをやれるのです。癇癪(かんしゃく)なんて起こしませんし、保護者のことを無視したりもしません。好きなことだけをやっているので、本人も楽しく生活するでしょう。

保護者が今現在心の底から求めているのは、こんな穏やかな生活ではありませんか?

でも、穏やかな生活だったとしても、こんな生活をずっと続けるなんて無理だと思いますよね。出来ないって思いますよね。子どものためにもならないとも思いますよね。

続けられなければ、出来なければ、穏やかな生活は望めないのかというと、そうでもありません。

穏やかな生活をどうしても諦められないのであれば、保護者はペアレント・トレーニングを必死に学んで習得して、そして実践してください。本人には自分のことは自分で出来るようになって欲しいと言ってください。大人でも出来ていない人がいることなら、すぐすぐ出来なくても良いし、保護者も手伝うからと。

そして保護者自身と本人の頭に、”出来ないものは出来ない”を叩き込んでください。本人に出来るだけ無理をさせないでください。その上で、本人にとって無理のない範囲内で、自分のことは自分でやらせるようにしてください。どうすれば出来るようになれるかを一緒に考え、今の本人には出来ないことなら、「代わりにやっておくね」と言ってからやってあげてください。

保護者がペアレント・トレーニングを実践しながら本人の心身の健康を守り、犯罪に繋がるようなこと、他人に迷惑を掛けるようなことだけ叱るようにしていれば、本人は周囲の人間たちと違って自分に嫌なことをして来ないどころか、自分のお世話を一生懸命やってくれている保護者のことが大好きになるはずです。

そして保護者に興味を向けた本人は、本来なら自分がやるべきことを保護者にあれこれとやらせていることに気付きます。毎日忙しそうに動き回っている保護者の目の前で寝っ転がってゲームしている自分に気付き、居た堪れないという感情が生まれます。自分の代わりにあれこれと引き受けてくれている保護者がしんどそうにしていることに心を痛めます。

それからなのです。本人の中に自分のことは自分で出来るようにならなければという意欲が生まれるのは。

つまりは時間が掛かります。それこそ早くて10年、遅ければ自立してから必要に迫られて、なんてこともあり得ます。

子どもはコップのようなものだと聞いたことがあるでしょうか。最初は何も入っていない空っぽの状態で生まれて来て、長い時間を掛けて保護者や周囲の人間から愛情を注がれ続け、コップから溢れ出たものがお返しとして周囲へと還っていくのです。人間とはそういう生き物なのです。

ここで言う愛情とは、お世話してあげることも含みますが、本人を出来ることも出来ないことも含めてあるがまま受け止めてあげることです。認めてあげることです。本人が自分を知り、自己肯定感を高めることが出来るような思いやりのある声掛けです。

それなら、”普通”の人でも出来そうですよね。

本人が出来ていないことを、何で出来ないのか、早く出来るようになれと叱るのではなく、どうすれば出来るようになるかを考えてあげてください。今はまだ出来なくても良いよ。自分のペースで出来るようになれば良いからね。それまでは保護者が代わりにやってあげるからとも言ってあげてください。

そうすれば、自己肯定感が上がります。自己肯定感が高ければ、あれこれとチャレンジすることも出来るでしょうし、実際に出来ることが増えるにつれて自信にも繋がっていくでしょう。自分の足でしっかりと人生という道を切り開いていける子になれます。

出来ることは増えたけど何となく不安だったり自分が嫌いだという人は、自分の出来るところだけを認めていて、自分の出来ないところをダメな部分だと否定しているのではないでしょうか。

頭に叩き込んだはずの“出来ないものは出来ない”を今こそ思い出してください。今現在出来ていないのは、詳しいやり方を誰からも教えられていないからです。どうすれば出来るようになるのか教えられていないからです。出来るようになれとしか言われていないからです。あなたは何も悪くないです。

昔と違って今はGoogle先生がいます。調べれば色々と詳しくやり方を教えてくれますし、YouTubeなら動画で分かりやすく教えてくれている人もいます。

大人でもあれこれ出来るようになれますよ。練習前なのですから、今はまだ出来なくて当たり前です。

子育ても一緒です。本人を育てるための教科書を作るために、まずは本人のことに詳しくなってください。どんなことが出来てどんなことが出来ないのか、当の本人も自分の欠点が口に出して言えるくらい自己肯定感が高い状態にしてあげてください。認めてあげてください。

そうしたら、本人のことが詳しく載っている教科書が保護者と本人の中に出来上がります。その教科書があれば、学校でも効率的に学ぶことが出来るでしょう。社会に出ても自分について書かれた教科書が自分の中にあれば、周囲にも自分を知ってもらうことが出来るので不安を感じることはありません。

今はまだ頼りない我が子も自分の力でしっかりと生きていけます。充実した人生を楽しく送ることが出来るようになります。

そのためにもまずは、ペアレント・トレーニングをどんな方法でも構わないので学んでください。

そう言われても何をどうすれば良いのか分からないときは私たちにご連絡ください。私たちも経験者です。子育てを絶賛実践中でまだ全然ジタバタと足掻いている最中ですから、そんな私たちと一緒に互いを支え合って穏やかな生活を目指しましょうね。